SESの引き抜きについて。
SESの引き抜きが、法律的に違法かどうか解説します!
また、企業・エンジニア視点で、引き抜きに対して「どう対応すればいいのか?」もご紹介。
SESの引き抜き転職で悩んでいる企業・エンジニア向けの記事ですので、ぜひ参考にしてください!
SESの“引き抜き”って違法なの?
ぶっちゃけ、SES業界で引き抜きはタブーですが、わりとあります。
僕も担当しているエンジニアが引き抜かれたことがありますので…。
客先常駐で仕事をするから、エンジニアを引き抜きしやすいんですよね。
本記事では、「SESの引き抜きが法律的に違法なのか?」について、SES業界で営業・人事を8年経験している僕が解説。
「引き抜きされた企業」・「引き抜きの話をされているエンジニア」、2つの視点でまとめました。
SESの引き抜きは法律的に違法なの?

原則OKです。
違法ではありません。
なぜなら、法律で「職業選択の自由」が保障されているからです。
日本国憲法 第22条第1項
「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」
引用:総務省行政管理局-電子政府の総合窓口(e-Gov)
「自分の意志」でエンジニアが転職するなら、引き抜きでも法的に問題はなく、損害賠償の請求などもNGです。
とはいえ、すべてがOKなわけではありません。
ポイントは「単なる転職の勧誘」かどうか。
引き抜く企業も、引き抜かれるエンジニアも「悪質」な場合はNGです。
SESの引き抜きで『企業』が訴えられるパターン

次の3つは「悪質」な行為として、訴えられます。
- その①:計画的に引き抜いた
- その②:大量に従業員を引き抜いた
- その③:元幹部が引き抜いた
1つずつみていきましょう。
その①:計画的に引き抜いた
計画性=悪質。
単なる「転職の勧誘」ではないからです。
- 長期的に自社への転職を提案し続けた
- 退職の方法・時期・条件を細かく説明していた
- 今の会社へ情報が漏れないように手配していた
「うちの会社へきてみない?」くらいならOKですが、上記は「計画的」な引き抜きになり、訴えられる可能性があります。
その②:大量に従業員を引き抜いた
普通に悪質です。
もとの会社からしたら、「大損害」ですよね。
実際に違法となった判例もあります。
東京コンピューターサービス事件 東京地裁(昭和63年)
コンピューター技術者の派遣業務を目的とする会社の幹部従業員が、在職中に、新会社設立を企て、退職後に右会社の従業員を引き抜いて、会社に損害を与えたとして損害賠償を請求された事例
引用:全国労働基準関係団体連合会-東京コンピューターサービス株式会社事件
この事件は、最終的に1,500万円以上の損害賠償の請求になっています。
その③:元幹部が引き抜きをした
損害賠償まで発展しています。
ラクソン等事件 東京地裁(昭和62年)
従業員の引き抜き行為につき、引き抜きをした競業企業と元営業本部長に対する不法行為による損害賠償請求が認容された事例。
引用:全国労働基準関係団体連合会-ラクソン等事件
前職で地位のあった幹部が、計画的に大量の人材を引き抜いた事件。
一般の従業員より、役員や地位のある人が引き抜きをするのは問題になりやすいということです。
SESの引き抜きで『エンジニア(従業員)』が問題となるパターン

エンジニア(従業員)が引き抜きで転職しても、基本的に問題はありません。
「職業選択の自由」で法律も守ってくれますので。
ただし、企業と一緒で「悪質」な場合は、問題になる可能性も…。
- その①:退職前から次の仕事をしている
- その②:職場の同僚を一緒に引き抜く
- その③:利益を不当に害した
具体的に見ていきましょう。
その①:退職前から次の仕事をしている
SES営業だとわりといますが、ダメです。
「職業選択の自由」があったとしても、労働者には「誠実義務」もあるので。
誠実義務=使用者の正当な利益を不当に侵害しないよう配慮する義務
具体的には次のような内容です。
労働契約においては、その継続的・人的性格から、当事者間における信頼関係の構築が重要とされ、双方が相手方の利益を不当に侵害しないように配慮し、誠実に行動することが求められる。
労働者が負うべき誠実義務には、使用者の信用・名誉を毀損しない義務、二重就業禁止義務、秘密保持義務、競業避止義務がある。
引用:労政時報の人事ポータル-jin-jour(ジンジュール)
引き抜きでの転職は問題はありませんが、退職前から次の会社の仕事をするのはNGです。
その②:職場の同僚を一緒に引き抜く
不当行為です。やめましょう。
あなた自身が引き抜きで転職するのは問題ないですが、「いっしょに新しい会社で働かないか?」と、他の同僚を誘って転職することはNGです。
特に、役職者や地位のある人が誘うのは、問題になりやすいので気をつけましょう。
他を巻き込まず、引き抜きで転職するなら自分だけにしてくださいね。
その③:利益を不当に害した
前提として、労働者に損害賠償を求めるのはNGです。
ただ、「社会規範を大きく逸脱した場合」は違法になる可能性もあります。
「社会規範ってどれくらい?」というのは状況次第ですが、実際には次のケースがあります。
- 何も言わず、勝手に退職した(ケイズインターナショナル事件)
- 役員が他のメンバーも引き連れて転職した(ラクソン等事件)
- 会社の重要機密を握って、競業先に引き抜かれていった(フォセコ・ジャパン・リミテッド事件)
補足として、競業への転職でも原則OKです。
入社時に「競業先への転職はダメ」って契約書を書いたりしますが、職業選択の自由があるので。
ただ、上記の「フォセコ・ジャパン・リミテッド事件」は、次の3つで問題となりました。
- 会社の重要な情報を持っていた
- 情報が流出すると多大な損害が出る可能性があった
- 競業先への転職が早すぎた
ぶっちゃけ、超レアケースなので気にする必要は特にないですが。
そのため、普通のエンジニア(従業員)が引き抜きで転職しても、問題になることはほぼありません。
SESで引き抜きをされたときの対応【企業編】

前提として、「職業選択の自由」があるため、引く抜きを止めるのはむずかしい。
誓約書や就業規則で引き抜きを禁止していても、「職業選択の自由」を不当に制限するとして認められないことが多いので。
とはいえ、「引き抜きを知ったのに、何もしないなんてできない!」ということもあります。
その場合の対応としては、次の2つかなと。
- エンジニアの紹介料をもらう
- 引き抜きの調査をして、違法か判断する
ちなみに、エンジニアの紹介料をもらう場合、「有料職業紹介」の免許が必要です。
- 有料職業紹介とは?
求職者へ仕事を紹介し、手数料や報酬をもらうこと(人材紹介事業ともいう)
違法性がなく、エンジニアの転職を止められないとしたら、紹介料を請求するのが唯一の方法かなと。
ただ、引き抜きの話があっても、「自社が好きだから転職しない!」という組織を作ることが一番重要なのかなと思います。
引き抜き転職するなら確認すべき3つ【エンジニア編】

「うちの会社にこない?」って、声をかけられると嬉しいですよね。
自分の実力を評価してくれたわけだし、大手や上場企業だとなおさらかなと。
ただ、安易に引き抜きで転職をすると、失敗する可能性もあります。
引き抜きで声をかけたれたら、次の3つは確認するようにしましょう。
- 確認①:引き抜きはバレるけど大丈夫か?
- 確認②:本当にその会社でいいのか?
- 確認③:自分の市場価値を確認したか?
詳しく説明しますね。
その①:引き抜きはバレるけど大丈夫か?

だいたい、前職の会社にバレます。
前職の取引先へ転職するわけなので、隠すのはむずかしいかなと。
ぶっちゃけ、前職とは気まずくなります。
損害賠償とかの問題はありませんが、「元同僚・上司との関係が悪くなるけど大丈夫なのか?」を確認しましょう。
まぁ、SES(客先常駐)だと同僚と一緒にいる時間が少ないので、大丈夫な方が多いと思いますが。
その②:本当にその会社でいいのか?

引き抜きの転職は、メリットだけではありません。
- 期待されたほど仕事ができず、会社に居づらくなった。
- 入ってみたらひどい環境だった。
- 既存社員との関係がうまくいかなかった。
また、知り合いの紹介で転職しているため、「退職したい!」と思っても辞めづらいなどのデメリットもあります。

実際、引き抜きで辞めたエンジニアから、「会社に戻れないか?」という相談もあったので…。
誘いを受けたからと言って、あせる必要はありません。
「今の環境は不満か?」、「今後どうしたいか?」、「本当にその会社でいいのか?」を考えて、決断しましょう。
その③:自分の市場価値を確認したか?
より「好条件の会社」へ転職できるかもしれません。
なぜなら、IT業界は人手不足なので、どの会社もエンジニア経験者を欲しがっているから。
年収・待遇など、より良い条件で転職できる可能性があるのを忘れないでください。
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まとめ:引き抜き転職は『OKだけど、しっかり考えよう』です

記事のポイントをまとめます。
- 「職業選択の自由」があるので、引き抜きは原則OK。
- 引き抜きのポイントは「単なる転職の勧誘」かどうか。
- SES企業が訴えられるのは「悪質」な場合。
- エンジニアは「誠実義務」があるので、就業中の会社に迷惑をかけてはダメ。
- 引き抜きは防げないから、「良い組織作り」が重要。
- 引き抜きで転職する前に、落ち着いてしっかり考えるべき。
こんな感じです。
最後にお伝えすると、引き抜きは「エンジニア」・「会社」のどちらもメリットはありますが、
確実にどこかの関係を悪くします。
法律的にOKだからと判断せず、「今後どうしていきたいのか?」を立ち止まって考えてみましょう。
考えた結果、「引き抜きで転職するならOK」ですし、「違うなら断われば良い」だけなので。
というわけで、今回は以上です。
少しでも記事が参考になれば嬉しいです!